研修に出たり就職先を調べたりする中で、色々と情報が入ってきたりするので、一般的にはあまりなじみのない司法書士という職業のリアルについてザックリとご紹介。
君は興味を持ったっていいし、持たなくてもいい。(世界樹)
------------司法書士のいいところ-------------
新規参入がしやすい
自分が考える司法書士最大の魅力といったらこれかなと。
定年がないから上が抜けていかないという士業特有の悩みはあるけれども、司法書士に関しては下からも数があまり出てこないので、他業種に比べて競合相手が比較的少ない。
加えて、銀行や不動産屋はある程度お抱えの司法書士がいる場合もあるが、素人さん相手の業務は基本的に一期一会になるので、独立開業しても1年目からそれなりの仕事をすることが可能。
そこらへんが税理士や行政書士とは決定的に違う点かなと。
裏を返せば固定客が少ないともいえるので、収入が安定しないというデメリットもあるっちゃある。
初期費用がかからない
最低パソコンと複合機と電話があれば業務可能なので初期費用がほとんどかからない。
一般的には50万円程度、レンタルオフィスや内装にこだわったとしても精々200~300万だろう。
飲食店の開業費用が2000万円、居抜きで安くすんでもン百万円代後半という事を考えればこれは破格の安さである。
そして司法書士が売り捌くものは自分の「知識」ということになるので、当然仕入れもゼロ円ということになるので在庫リスクなんてのも司法書士には存在しない。
そういう面では商売のリスクというものは限りなくゼロに近い。上手くいかなかったら看板下げて廃業すればいいだけの話だ。50万程度なら悪い女に騙されたとでも思えば比較的簡単に諦めもつくだろう。
ただその代わりというわけではないだろうが、各都道府県司法書士会への登録料(ざっくり言うと年会費)がベラボウに高い。各都道府県毎に多少の誤差はあれど、年で20~30万円は持っていかれる。
その分他業種よりも研修等が充実しているとは言えるが、さすがに高すぎやしませんかね……
どこでもできる
勤務地に関してだが日本全国どこでもできるし、どこでも必要とされる仕事である。
弁理士や会計士などは業務上必然的に大都市及びその周辺で勤務することが大半だと思うが、司法書士は別に北海道の山奥だろうが沖縄のビーチのすぐそばだろうが構わない。
実際そういったところでスキー場やリゾートホテルの登記をメインにしている先生がいるという話も聞く。
事務所に関してもだが、これも別にどこでも構わない。一般的にはマンションの一室やレンタルオフィス、もしくは平屋やプレハブを建てたりとかだと思うが、極端な話実家の子どもおじさん部屋を事務所にしても構わないわけだ。
自分は「通勤」というものが働く上で何よりも嫌いで、かつ無駄であると思っているので、そういった自由度の高さは非常に嬉しい。
毎日満員電車なんて絶対にゴメンだし、可能ならば片道ドアtoドアで30分以内に納めたい人間なのである。
定年がない
個人的には日本の年金制度はもうとっくに破綻していると思っている。
国も色々考えているようだが、劇的にポジティブな方向へ向かうような雰囲気は今のところ皆無である。
というわけで、余程資産がある人や計画を立てて老後に望んだ人以外は、ある程度老後も働く事を強要される世の中になって行くのは間違いないであろう。
そんな中老後も若い頃と同じような仕事ができるだろうか?雇う側も同じように雇ってくれるだろうか?俺は到底無理な話だと思っている。
よっぽどの経歴があって天下り的な事ができる人なら話は別だが、現状(そこら一般の)定年後の高齢者がやる仕事の大半は、シルバー人材派遣センターに登録して警備員のバイトや交通整理のバイト、他には空き地の芝刈りや各種運転手、さらにはそれこそ老老介護などである。
別にそういった仕事をバカにしているわけではないが、自分が70歳80歳になったときにそういう事をやりたいかと問われるとそれはNOなわけである。
そう考えると手に職をつけて、かつそれに定年がないというのは明確な武器になるものだと考えている。
といってもさすがに90歳や100歳までできるような仕事だとも思っていない。周りの話を聞くと大体70歳半ばで廃業したり、事務所を承継したりするケースが多いようだ。まぁそこまでそれなりの収入を得ながら働ければ充分であろう。
社会的地位の高さ
別に試験に受かったからって人として偉くなったわけではないが、一般的には「先生」と呼んでもらえる社会的地位が高めの職業である。
俺は全く興味がないし、人によってはこそばゆいと感じる人もいるようだが、悦に入りたければ悦に入ることも可能。
------------司法書士の大変なところ-------------
儲からない
食えないことはないがお金儲けできる職かと問われると「否」と答えざるを得ない。
具体的な数字を出すと、独立してそれなりに上手くいってる司法書士で年収1000万~1500万の手取り(課税所得)が600~800万程度らしい。
で、そこに到るコスト(主に時間と支出)を考えてみる。
試験の合格率が4年でおよそ50%なのでそれをベースに、合格後2~3年ほどどこかの事務所で修行、独立して3~4年経過して事務所経営を軌道に乗らす、と考えると10年程度費やして手取り600~800万という事になる。
新卒で考えると32歳で600~800万の収入という事になる。さぁどうだろうか?
何年も勉強に費やして精々ちょっといいとこのリーマンといったところになる。それだったら最初から大学受験を頑張っていい大学入っていい企業に勤めた方がコスパはいいわけだ。その方が女にもモテる(笑)
しかし、これはあくまで新卒で考えた場合だ。
司法書士試験の合格者の平均年齢は40.65歳(R4年度)とある。30半ばで勉強初めて40で合格して数年修行して40半ば~50前で独立・安定と考えるとどうだろうか?
40半ば~50前で手取り600~800万。これはもう珍しくもなんともない数字といえるだろう。「お金が稼げる仕事だよ」とはちょっと言えない数字かなと思う。
それ以前に現代人の30代なんて、社会人としては一番脂が乗ってイケイケな時期であろう。そんな時を数年も試験勉強に使うなどお金以上の大切な何かを失っている可能性もある。ましてや守るべき家庭などがあったら尚更である。
司法書士に限った話ではないが「労働は収入が全てだ」という価値観がある人には法律家はおススメしない。それ以外の何かを求めないとモチベーションもバイタリティも、とてもじゃないがもたないと思う。
ただ前述のとおり定年がないので、60代70代になっても手取り600万~800万稼げる職業だと考えればそれは明確なメリットの1つになるのかもしれない。
その年でその額稼げる職業は中々ないと思うよ;^^
責任が重い
法律家という職業上、依頼者の人生に直接タッチすることも珍しくないわけで、そこで何かやらかすとその人の人生そのものが盛大にズレてしまうという重大な責任が伴う。
司法書士の一般的な業務である不動産登記も、不動産なんて安くても数百万円はするわけだ。数千万円、中には数億円の案件を抱えることも珍しくないわけで、そこで何かやらかすととんでもない額の損害賠償請求を食らうことも考えられる。
これが会社勤めなら会社という後ろ盾があるわけだが(当然クビ+その業界にいられないぐらいはあるだろうが)司法書士の場合は直にこの責任が両肩に乗っかってくるわけである。
「印鑑証明書だの運転免許だの本人確認しつけーぞ!」という声があるのも分かりますが勘弁してください、マジで何かあった時ヤバイんですから!
試験が難しすぎる
厳密に言うと試験が難しいというよりは「合格するのが難しい」である。
何がそんなに難しいのかは長くなりそうなので割愛するが、2~3年ですんなり合格する人もいれば10年以上浪人という人もそれなりにいるレベルだと思っていただけたらよい。
受かるにしても諦めるにしても目指した時点で色々と覚悟が必要な試験であることは間違いない。
結婚などしている人は家族の理解・協力が必須になる。無断で始めたらマジで離婚とか切り出される可能性もアリ
死ぬまで勉強
試験に合格して勉強終わりかと思うがそうはいかない。
悲しいかな、法律なんて毎年コロコロ変わるわけで常に新しい知識や情報をアップデートしていかなければいけない。それは廃業しない限り死ぬまで続くことになる。
司法書士が売っているものは知識と技術なのだから、それがなくなったらオシマイなのである。
まぁあの試験に合格してる時点でそこは問題ない人達なんだろうが「もうヤダ!大人にもなってこんなに勉強したくない!」って人は止めておいた方がいい。
地味でマイナー
業務自体は極めて地味である。責任の重さは桁違いだが業務内容に関しては大半がそこらへんの事務作業と同じようなものだと考えてもらって差し支えない。
さらには司法書士自体の数もそんなに多くはないし、一般の人が司法書士を活用することもそうそうないので「司法書士って何やってる人なの?」と聞かれることもしばしばある。
高齢者や会社役員の人ならともかく、20代~30代の若者など司法書士が何をやっている人なのか、正確に答えられる人の方が少ないだろう。
試験の難しさを鑑みても少し不遇かなと感じる要素ではある。
------------司法書士に向いている人-------------
・コミュ力がある人
なきゃダメとかそういう話ではない。フツーに学生生活送ってきてフツーに社会人経験積んできた人なら大丈夫。ただ学生時代友達が作れずボッチだったとか、どの職場に行っても人間関係が上手くいかないって人は司法書士(というか自営業全般)は厳しいと思う。
夏の外灯に群がる蛾のように、何もしないでも人が勝手に寄ってくる超絶美男美女だったら話は別だが、当然そんな人には司法書士よりも適した職があるはずである。
とにかく一般的なコミュニケーションが会話で構築できないとこの職はどうにもならない。そういう意味では意外と女性の方が向いてたりするのかもしれない。
・几帳面な人
文字通り漢字一つ間違うだけでドエライ事になるので、正確な仕事ができる人でないと難しい。世間一般ではあまりポジティブな意味では使われないが「神経質」なぐらいでちょうどいいと思う。
大雑把でテキトーな人はちょっと……
・時間にルーズじゃない人
遅刻はもちろんNGだが、9時始業だとして8:58とかに来る人も危ない。
9時始業なら8時半ぐらいには出社してデスク周りを片付けてコーヒーでも飲みながらメールチェックでもしつつ、余裕を持って座して始業を待つ、そういう人が司法書士に向いていると思う。
銀行決済で一番最後に司法書士登場とかそれはマズイよw
・独立して自分のペースで自由に働きたい人
一生雇われという人もいるが、基本的には司法書士は独立志向の職である。当然どこで働こうがいつ働こうがどんな働き方をしようが自由となる(無論責任は伴うが)
誰に邪魔されることもなく、自分の腕1本で飯を食っていくことになる。そういう意味では士業の中でももっとも士(サムライ)らしい職といえる。
ただ逆に考えれば会社などの後ろ盾もなければ、弁護士や税理士ほど固定の依頼者もそこまで多くはないため毎月一定額の収入が約束されているとか、そういった仕事ではないのは要注意。
やらなきゃ食えない。以上。
・ある程度社会経験を積んだ人
これは別に若い人がダメと言っているわけじゃないんだけど、やっぱり司法書士の仕事って地味だし、そんなにお金を目的に働けるような仕事でもないんだよね。なのに貴重な若い時間を何年も試験勉強に費やすってのはちょっと勿体無いかなーと個人的には思う。
研修には現役の学生さんもいたけれど、大学時代なんて人生で一番楽しい時じゃん。はっきり言ってこれから先それ以上楽しい時間なんてマジでないよ(笑)
だったらさ、もっと楽しいこととか夢を追いかけるとかしよーぜ。それこそ大金持ち目指して起業してみるとか、小さい頃からの夢だったミュージシャン目指すとかでもいいし、単に悪友と一緒に街に繰り出してナンパするでもいいし、ワケわからんけど自分探しの旅とかで海外いったっていいよ。
やりたい事色々やってさ、それでも芽が出なくて30過ぎた辺りから司法書士とか目指しても全然遅くないから。
「司法書士になるのが小さい頃からの夢でした!」なんて人がいれば別にそれは否定しないし素晴らしいと思うんだけど、そんな人そうそういないでしょ。若い内はもっとやりたい事を自由にやって欲しいなと思います。
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