ただいま絶賛司法書士の研修中ですが「そもそも司法書士って何するの?」という率直な質問をいただきました。
たしかに一般の人とはカラミ少ないだろうなと思いながら、それ以外によく聞かれる事、過去言われたことをまとめておきました。
少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
司法書士って何するの?
司法書士法第三条に書いてあるよ。
もう少し具体的に言うと、相続発生時や不動産売買の際の登記申請の代理、会社設立や役員変更の申請の代理が主な業務だよ。
他には成年後見や信託、企業内法務がない中小企業の顧問、あとは講演したり本書いたり理系出身の司法書士なんかでは登記ソフトのシステム構築したりしてる人もいるよ。
別に登記だけしか仕事がないし、登記だけしかやっちゃいけないなんて決まりは全然ないよ。
行政書士と何が違うの?
そもそも業界が違うよ。行政書士は総務省管轄、司法書士は法務省管轄だよ。意味は読んで字の如くだよ。行政書士は行政機関へ提出する書類の申請代理、司法書士は裁判所や法務局へ提出する書面の申請代理をするよ。
分かりやすく言うと市役所へ出す書面は行政書士、裁判所へ出す書面は司法書士だよ。
弁護士だけの仕事と思ってる人が多いみたいだけど、訴えたい奴がいるなら別に司法書士に訴状書いてもらっていいんだよ(ただし自己弁護になるよ)
あとは恥ずかしい話だけど、たまに農地法の許可申請を代理して懲戒喰らう司法書士、逆に会社設立の登記を代理して懲戒喰らう行政書士が一定数いるよ。
逆だったかもしれねェ……っていうか逆なんだよね、それは。
全く関係ないけど、土地家屋調査士の先生なんかは名前は国土交通省っぽいけど実は法務省管轄、立派な法律の専門家なんだよ。
弁護士と何が違うの?
ドラゴンボールで言うと、弁護士はサイヤ人で司法書士はナメック星人だね。弁護士はバリバリの戦闘屋で最前線でモメ事を解決するよ。司法書士はドラゴンボール作ってみんなの望みを叶えて権利を取得させてあげたりするよ。
だから「とりあえず司法書士に頼んでダメだったら弁護士に頼もう」と上位下位のイメージで考えてる人が多いみたいだけど、仕事の内容が全然違うよ。
ナメック星人に闘ってこいっつったって無理だし、サイヤ人にドラゴンボール作ってっつったって無理だよ。
ただ『簡裁訴訟代理権』というものを持っていて、ギニュー特戦隊ぐらいまでならなんとかなるピッコロさんみたいな例外もいるけど、やっぱりフリーザ様レベルを相手にするのは無理なんだよね。
揉め事が起こりそうな時や、すでに揉めてる時は最初から弁護士の先生を訪ねた方が二度手間がなくていいと思うよ。
司法書士なんか仕事ないよ
じゃあ現役の司法書士はどうやってメシ食ってんの?霞でも食ってんの?いつから司法書士は仙人になったの?
でも登記件数が減ってるのはリアルだし、人口減少が避けられない以上これからも減っていくであろう事は間違いないよ。
その代わり今は個人相手には成年後見や家族信託、法人相手には中小・零細企業の顧問司法書士(事業承継や組織再編、増資や減資の助言等)といったコンサルタント業が伸びているみたいだよ。
ちなみに弁護士をイメージする人が多いけど、実は後見業務で一番頭数が多いのは司法書士だよ。
司法書士なんか儲からないよ
それはマジ(直球)
あまりにも難しすぎる試験、そしてなにかあったら何千万何億の損害賠償がくる責任の重い仕事、コスパのパを「収入」と定義するなら士業はおろか日本国全業種の中で最悪クラスだと思うよ。
ただ仕事のパフォーマンスって収入だけではないし、そもそもお金持ちになりたいから弁護士になりました、司法書士になりました、税理士になりました、行政書士になりましたなんてあんまり聞いた事ないよ。収入以外の何かを求めて目指した人が多い印象があるよ。自分もそうだよ。
ちなみにリアルな数字を出すと見習いで300~400万、いっぱしの雇われで500~600万、都内の忙しい事務所や独立して上手くいってる人で手取り800万とかそんなもんらしいよ。
もちろん本書いたり、予備校の講師したり、特殊なことをして何千万何億と稼いでる人もいるようだけど、みんなが考えているような一般的な司法書士の業務だけで手取り1000万いくことは稀だと思うよ。
タワマンぐらいならともかく、ビルを建てたいとか芦屋に豪邸建てたいって人は司法書士じゃ難しいと思うよ。
登記で50万近くもとられた。詐欺じゃね?
それは多分登録免許税(要は経費)込みだと思うよ。
司法書士の報酬自体は数万、いっても10万円ぐらいだと思うよ。見積書の内訳見てみてね。
逆に考えればたった数万円で数千万だの数億だのの取引の責任を司法書士の両肩に乗っけてんだよ。ヤバくね?
司法書士の「ハイOK!」の一言で億単位のカネが動き出すんだよ?司法書士を単なる代書屋って揶揄する人もいるけど、ホントなにも分かってない人間だと思うよ。
そういった責任の重さに耐えられない(の割に儲からないから)で廃業していく司法書士も少なくないってきくよ
司法書士の試験って難しい?
ゲロ吐くほど難しいよ。厳密に言うと問題が難しいというよりは合格するのが難しいよ。
常人なら2~3年あれば合格レベルの知識は身に付くだろうけど、そこから沼にはまって5年10年と浪人する人も全然珍しくないよ。
試験範囲、そしてシステムがあまりにもイカれてるんだよね。せめて基準点越えた科目は翌年ぐらい免除が欲しいよ。
詳しくはググってみてね。
どれぐらい勉強した?
ザックリだけど合格まで5000時間はかかってると思うよ。周りの話聞いてもイチから始めた人はそれぐらいかかってる人が多い印象だよ。
ただ、あくまで「合格まで」であって、実際は2000~3000時間も勉強すれば合格ラインで闘える程度の知識は身に付くと思うよ。実際2~3年でサクッと合格しちゃう人もそれなりにいるよ。
前知識一切ナシで、まっさらな状態から勉強初めてイッパツ合格した人は間違いなく天才だよ。それはもうヒトじゃないよ。ヒトの形をした何かだよ。
実力が一番大切なのは言うまでもないけど、司法書士試験はその範囲の広さとシステムの都合上、運の要素もかなり大きいよ。予備校の模試で常に上位にいたとしても、本番の出題によっては受からない時は本当に受からないよ
英語できなきゃダメ?
いらないよ。
たしかに英語が必要な場面(外国人が日本で会社を作りたいとか、相続人が海外にいて必要書類を得る為に海外の法人や公的機関とやり取りする時)はあるけど、それは辞書や翻訳機使いながらメールでやり取りすればいいよ。
リアルタイムで論述するわけじゃないから国際弁護士や弁理士の先生ラインまで英語ペラペラが必須というわけではないよ。
ただ全く話せないのではあまりにもカッコがつかないから、日常会話ぐらいは多少カタコトでも話せたらスマートかなとは思うよ。
あとは在留外国人も毎年増えてるし、今後必ず需要が増えていく分野かなとは思うよ。
何か必要な資格ある?
運転免許はほぼ必須だと考えた方がいいよ。
依頼者宅や関係機関にピストンする事になるからね。
少なくとも持っていれば優遇されることはあれ、損することは絶対にないのでもっておくに越したことはないよ。
他には特にないよ。
どんな人が司法書士に向いてるの?
とにかくコミュニケーション能力がある人!これに尽きるよ。
といっても常にクラスの中心にいた陽キャじゃなきゃダメというわけではないよ。それなりに友人がいて、それなりに恋愛してきて、それなりの社会生活してる人ならOKだよ。
逆にコミュ力に乏しい人は正直厳しいと言わざるを得ないよ。
書面書くだけみたいに考えてる人もいるかもしれないけど、それは最後の最後だけだよ。仕事のほとんどは銀行や不動産屋、裁判所や法務局その他行政機関、会社の役員さんや他士業の先生方、あとはもちろん依頼者やその家族との連絡のやり取りだよ。
だから人付き合いができないっていうのは司法書士(というか士業・自営業全般)にとっては致命的だよ。
どの職場にいっても人間関係が上手くいかないって人や、現実に会った事はないけど、同僚や上司に飲みに誘われて「それ業務ですか?違いますよね?」とか言っちゃう人や、カラオケに誘われて「カラハラだ」とか言っちゃう人、過去一度でもマジトーンで「お前空気読めないよな……」って言われたことがある人は、司法書士はやめておいた方がいいと思うよ。
逆に実家に帰ったときなんかに、近所のおじさんやおばさん、高齢者に可愛がられるような人は絶対司法書士に向いてると思うよ。
業務上、認知症の高齢者や精神障害者を相手にする事もザラにあるわけだしね。
アタマの良さはまっっっっっっったく関係ないよ。
上の話でいえば、まっさらな状態から初学者が1年でイッパツ合格、それは確かに素晴らしいし人間業じゃないんだけど、じゃあその人が誰からも信頼される優れた司法書士になれるのか?といったらそれは全く関係のない話なんだよね。
AIで仕事なくなるんじゃないの?
前述のとおり、そういう事を全部AIがやってくれるというのなら、その時は当然になくなると思うよ。
ただ現実にそうなるような時って、医師の仕事も弁護士の仕事も税理士の仕事も行政書士の仕事も会計士の仕事も薬剤師の仕事も、それこそ教師や保育士の仕事も全てなくなる、そういうレベルの話だと思うよ。対人コミュニケーションも全てAIがやってくれるという事なんだからね。
でもそれって仮にできたとしても5年先とか10年先の話ではないよね。もっと先の未来の話だと思うよ。
そもそもその時はそこらへんのサラリーマンやOLさんがしてるような仕事はとうの昔になくなってるはずなので、あまり司法書士だけ気にしなくていいと思うよ。
司法書士ってモテる?
全くモテないみたいだよ。そもそも存在を知られてないよ。
相続なんて人生に1回や2回ぐらいだし、不動産購入なんてのも人生で1回や2回ぐらいだろうから、現実に一般の人とのカラミがなさすぎるんだよね。
依頼者も会社役員や相続発生者ともなれば当然に高齢者が多いわけで、若い女の子の間では司法書士なんて「行政書士以上弁護士未満でしょ」ぐらいの認識しかないと思うよ。
でも責めてるわけじゃないよ。こっちが「オマエラもっと司法書士について勉強しろよ!」なんていうのはお門違いだし、むしろ頑張るのは司法書士達自身の方で、そして業界を盛り上げていかないといけないなと思うよ。